借りてる事を忘れないうちに
2015年2月19日
○ヨさんは大事な物を入れている箱の中から、ポケットアルバムを出しました。
もう何度も見せられたアルバムなのですが、○ヨさんのお勤め時代の旅行写真や
○美ちゃんの二人の息子たちの結婚式の時のスナップ写真などが収められています。
どの写真を見ても、すぐに○ヨさんは見つかります。
ある時は、まっ黒なサングラスをかけて、ある時は真っ赤なコートに身を包み、
また、1年前の○次君の結婚式では、モノトーンの他の参列者の中にただ1人、
光沢のあるパステルグリーンの着物で満面の笑みを浮かべて写っています。
アルバムを見て、○ヨさんはおもむろに立ち上がり、洋服ダンスに向かいました。
タンスの上に置いてある箱を取り出し、「このドレス、アンタにあげるよ。」と言います。
○人君の結婚式に○ヨさんが着たキラキラビジューのグリーンのシフォンドレスです。
フォックスの襟がついた皮のロングコートも出してきて、「アンタにあげる。」と言います。
「ここにある洋服や着物、私がいなくなったら全部アンタにあげるからね。」
「○枝(義弟の妻)や○次の嫁には絶対にあげないんだから、全部アンタが持って行ってね。」
「○次の嫁が、どうも、あの着物を狙っているみたいなんだよ。」
(ありがとう、お義母さん。でも、欲しい人がいるのなら、その人に使って貰いましょうね。)
そろそろ、帰宅したくなってる夫が○ヨさんに向かって
「おふくろ、人から借りたお金はもう返したの?」と尋ねました。
(お金に関することは、○ヨさんが逆切れしないように、なるべく夫が言うようにしています。)
「まだ返してないよ。だって、お金がもうこれしかないんだから。」
そう言って開いて見せた○ヨさんのお財布の中には5000円札が1枚と、小銭が800円ほど。
「ほら、1週間分の生活費を渡すから、借りたお金は返して来なよ。」とお金の入った封筒を渡す夫。
「わかったよ。」そう返事をした○ヨさんですが、本当に返しに行ってくれるでしょうか。
借りてることを忘れないうちに、どうか返して来てくれますように・・・。